山野研究室の概要 H15/07/07
― はじめに: ここに示す資料の全体についての説明 ―
(1)資料作成方針
本研究室が,
どのような陣容で
1.何を考えて,何のために,何を目的として
2.今まで何をしてきて,今何をしており,今後何をする積りか
3.今までの成果は何か
を簡潔に示すこと。
(2)研究・教育活動の基になっている考え
1.
省エネルギー技術開発
2.
創造力育成教育
を本研究室の研究・教育活動の主要課題としております。
1.と2.を研究活動の課題としており,2.を教育活動・地域貢献活動の課題としております。
理由は下記の通りです:
・
天然資源がほとんど無い日本は21世紀も今までと同じく工業国として生きる以外に道はありません。
・
しかし,この道は今までと比べてはるかに険しい道となります。すでに給与水準が世界一高い先進国となった日本は,欧米との熾烈な技術開発競争と製品価格の面で有利な開発途上国の激しい追い上げの中で生き残らなければならないからです。
・
そこで生き残るためには,先ず,エネルギー他の工業資源の安定確保が必要です。枯渇の問題に対処しなければならないエネルギーの確保は特に重要です。上記の課題1.はこれに資するための研究です。
・
次に,上記の熾烈な国際競争に打ち勝つためには,次々と新技術を開発せねばなりません。そのために最も必要なことは,基礎力を十分に備えかつ創造力豊かな,最先端を切り開いて行ける人材を一人でも多く育てることです。上記の課題2.はこれを念頭に置いたものです。
(3)目次
「1」
教官および在籍院生
山野惟夫
・職名:兵庫教育大学 生活・健康系教育講座(技術分野)教授
・生年月日:昭和17年1月26日
・最終学歴:昭和41年3月横浜国立大学大学院工学研究科造船工学専攻(修士課
程)修了
・学位:工学博士(平成3年5月,東京大学),「プロペラ起振力軽減に関する研究」
・職歴:
昭和41年4月:川崎重工船舶事業本部研究開職
昭和61年8月:同性能開発課長
平成6年4月:同基本設計部主幹
平成8年4月:川崎重工明石技術研究所流体
技術研究部長
平成8年8月:(株)明石船型研究所取締役(兼
務)
平成10年4月:兵庫教育大学教授
・専門分野:流体工学(輸送機械の省エネルギー)
・所属学会:日本造船学会,関西造船協会,西部造船会,可視化情報学会,日本産業技術教育学会
田ノ岡直樹
・修士課程1回生
・宝塚市立安倉中学校技術科教諭
・修士論文題目:「教材用模型飛行機の設計
法に関する研究−発進直後の急墜落についてー」
・趣味:テニス,犬
・携帯電話番号:090-5011-9456
・現職教員へのメッセージ:是非この大学の大学院へ来てここを活用してください。得るところ大と思います。
「2」
研究室電話番号等
・場所:兵庫教育大学 自然,生活・健康棟1階103号室
・電話:0795−44−2199(直通)
・FAX:0795−44−2199(直通)
・E-mail: yamano@life.hyogo-u.ac.jp
「3」
研究活動
(1)
船舶の省エネに関する研究
1)目的
・現象が複雑なために取り扱い方が難しく,その結果,未解明のまま船舶流体力学に残されている重要な課題の一つにトランサム船尾による造波抵抗がある。そのために船尾波が残っている船舶は今でも多い。
・この造波抵抗の特性を先ず解明すること,次にそれを基にして造波抵抗が小さいトランサム船尾形状の合理的な設計法を開発することが本研究の目的である。
・これを通して,船舶の省エネに寄与することが本研究の狙いである。
Fig.1 トランサム船尾による船尾波の一例 (川崎汽船提供)
2)現在まで,現状および今後の予定
・現在までに,
実験によりトランサム船尾周りの流れの構造を明らかにした。それを基にしてトランサム船尾周りの流れを3つの成分に分離して,それぞれの成分による抵抗の推定法を開発した。これによりトランサム船尾による船尾造波抵抗を解析的に取り扱えるようにした。これを基にして,各成分の特性(尺度影響)を明らかにした。
・現在,トランサム船尾船底プロファイル形状と船尾造波抵抗との関係を理論・実験の両面から研究中である。
・今後,その結果を基にして,トランサム船尾の最適形状設計法を開発する予定である。
3)過去3年間の発表論文(学術論文,国際学会プロシーディング)
山野惟夫,池淵哲郎,船野功, 2000a, "On Forward-oriented Wave Breaking just behind a Transom
Stern", 日本造船学会論文集, Vol.187, pp.25-32.
Yamano, T., Hibino, N. and
Kuratani, F., 2000b, "On Scale Effect of the
Resistance due to Wave Breaking just behind a Transom Stern",
Proceedings of 7th IMDC, Kyongju, pp.567-577.
Yamano, T., Kusunoki, Y.,
Kuratani, F., Ikebuchi, T. and Funeno, I., 2001a, "On
Scale Effect of the Resistance due to Stern Waves Including Forward-oriented
Wave Breaking just behind a Transom Stern", Proceedings of 8th
PRADS, Shanghai, Vol.1, pp.485-492.
Yamano, T., Ikebuchi, T. and
Funeno, I., 2001b, "On Stern Waves Consisting of
Forward-oriented Wave Breaking and Remaining Following Waves",
Journal of Marine Science and Technology, SNAJ, Vol.6, No.1, pp.13-22.
Yamano, T., Kusunoki, Y.,
Kuratani, F., Ogawa, T., Ikebuchi, T. and Funeno, I., 2001c, "Scale Effect of Stern Waves due to a Transom Stern -
Experimental Confirmation by a New Method -", Proceedings of 2nd
International Workshop on Ship Hydrodynamics, Wuhan, pp.113-118.
船野功,山野惟夫,2001d, “2次元トランサム船尾造波流場について”, 関西造船協会論文集 , No. 235, pp. 23-30.
山野惟夫,楠芳一,鞍谷文保,小川武範,池渕哲朗,船野功,
2002, "A Method to Confirm Scale Effect of Stern
Waves due to a Transom Stern",関西造船協会論文集 , No. 237, pp. 1-7.
山野惟夫,楠芳一,鞍谷文保,小川武範,池渕哲朗,船野功,
2003a, "Effect of Transom Stern Bottom Profile
Form on Stern Wave Resistance – An Experimental Study -",関西造船協会論文集,
No. 239, pp. 1-10.
Yamano, T., Kusunoki, Y.,
Kuratani, F., Ogawa, T.,and Funeno T., 2003b, "On
the Effect of Bottom Profile Form of a Transom Stern on Its Stern Wave
Resistance", Proceedings of 8h IMDC, Athens, pp.81-94.
(2)
模型飛行機の教材化に関する研究
1)目的
・21世紀野の技術教育は創造力育成を重視すべきである。設計・製作を含む「ものづくり」を早い時期から体験させることは創造力育成のために有効と考えられる。「ものづくり」の対象に,教材としての優れた特徴(創意工夫させ得る要素が多い,短時間で製作可能,完成時の達成感が大きい,材料費が安い)が期待できる模型飛行機を選んだ。この模型飛行機の教材化が本研究の狙いである。
・具体的な研究項目は次の3つである:
1.設計法の明確化
2.教材用模型飛行機の開発
3.開発した教材を教育現場で試行してその効果を確認する
2)現在まで,現状および今後の予定
・現在までに,
1.設計法の幹の部分を明確にした。
2.紙飛行機・ゴム動力プロペラ機共に短時間で製作可能で所要の性能を持つ教材用模型飛行機を開発した。
3..小中学生に開発した模型飛行機を作らせることで,教材としての適否を確認した。
Fig.2 教材用ゴム動力プロペラ機の1例
・今後は,
1.発進直後の急墜落問題対策等,設計法の詳細を明確にする。
2.開発した教材用模型飛行機の更に一層の造りやすさと性能向上を計る。
3.より多くの児童生徒に模型飛行機によるものづくり体験をさせるとともに,これを通して教材の更なる改良を計る。
3)過去3年間の発表論文
山野惟夫,大田成人,神田浩二,道法浩孝,日比野直樹,渡辺直彦,2000,“技術教育教材としての模型飛行機に関する研究 −小学校での教育実践についてー”,日本産業技術教育学会第43回全国大会講演要旨集,p.24
安東茂樹,山野惟夫,大塚芳生,馬越顕,そま本一也,赤井勝義,2000,“技術的思考を育む「グライダー」の題材開発とその実践”,日本産業技術教育学会第43回全国大会講演要旨集,p.117
杉原将和,鞍谷文保,山野惟夫,2000,“教材用模型飛行機の設計法に関する研究―縦安定性判断資料の検討―”,日本産業技術教育学会近畿支部第17回研究発表会講演論文集,pp.1-2
馬越顕,大塚芳生,山野惟夫,2000,“小・中学校での模型飛行機を使った教育実践”,日本産業技術教育学会近畿支部第17回研究発表会講演論文集,pp.46-47
杉原将和,鞍谷文保,小川武範,山野惟夫,2001,“教材用模型飛行機の設計法に関する研究―主翼と水平尾翼の迎え角の差が縦安定性に及ぼす影響―”,日本産業技術教育学会第44回全国大会講演要旨集,pp.64
杉原将和,鞍谷文保,小川武範,山野惟夫,2001,“教材用模型飛行機の設計法に関する研究―主翼のキャンバー差が縦安定性に及ぼす影響―”,日本産業技術教育学会近畿支部第18回研究発表会講演論文集,pp.23-24
山野惟夫,大田成人,神田浩二,道法浩孝,鞍谷文保,2001,”技術教育教材としての模型飛行機に関する研究 −設計方法についてー”,日本産業技術教育学会誌第43巻第1号,pp.15-25
山野惟夫,大田成人,神田浩二,道法浩孝,鞍谷文保,2001,”技術教育教材としての模型飛行機に関する研究 −大学院の授業の評価ー”,日本産業技術教育学会誌第43巻第4号,pp.9-24
安東茂樹,山野惟夫,大田成人,神田浩二,道法浩孝,2001,“ものづくりによる総合的学習の展開―模型飛行機づくりの実践を通してー”,日本総合学習学会誌,第4号,pp.56-63
山野惟夫,大田成人,神田浩二,道法浩孝,日比野直樹,渡辺直彦,2000,“技術教育教材としての模型飛行機に関する研究 −小学校での教育実践についてー”,日本産業技術教育学会第43回全国大会講演要旨集,p.24
山野惟夫,杉原将和,鞍谷文保,小川武範, 2002,“教材用模型飛行機の設計法に関する研究―シミュレーションによる縦安定性の検討―”,日本産業技術教育学会第45回全国大会講演要旨集,pp.78
「4」
教育
1)大学院博士課程
「生活の工学」: 幾つかの新技術開発例について講義・討論をして,工学の役割,その目的を達成するために重要なこと・必要なことは何か,そのために必要な教育は何かを考えてもらうことを目標としている。
2)大学院修士課程
「エネルギー変換論」:エネルギー変換機器の効率に重点を置いた講義・演習を通して,エネルギー問題・その対策の一つである省エネルギー技術開発・技術と科学の関係・新技術開発に必要なこと・そのために必要な教育等を考えてもらうことを目標としている。
「エネルギー変換論実習」:エネルギー変換機器に多用される翼に着目して,その端的な応用例である航空機を取り上げて,模型飛行機の開発をしてもらう。基本設計から性能確認試験に至るまでの工業製品開発に必要な一連の工程を体験させることで,技術とは何か・技術開発とは何か・技術開発における科学と創造力の重要性を身をもって理解させることを目標としている。
Fig.3 体育館の天井近くを飛行する院生が開発した模型飛行機の1機
(H14年度,森本宏伸M.A.NO.
HM-IP3)
3)学部
「技術とものづくり」: 紙飛行機の基本設計から性能確認試験までの一連の作業をしてもらう。これを通して,ものづくりにおける科学の有用性,科学の不完全さを補う創意工夫の重要性,教育におけるものづくりの有用性を身をもって理解してもらうことを目標としている。
Fig.4 学生が設計した紙飛行機の一機 (H14年度,鈴木友美M.A.NO.h13-G2)
「家庭電気・家庭機械」: エネルギーについての講義と写真たての製作が授業内容である。これを通して,わが国のエネルギー問題に対して認識を深めてもらうことと,工業製品の完成までに如何に多くのエネルギーが使われているかを身をもって理解してもらうことを目標としている。
Fig.5 写真たての完成 (H15年度第2班:木原,小林,竹内,中野,H15/4/28)
(2)現在までに指導した院生の修士論文(1998年4月の本学着任後)
・2001年3月修了,日比野直樹,「ブラントな後端を持つ物体の直後の流れに関する研究」
・2002年3月修了,楠芳一,「ブラントな後端を持つ物体の後端による抵抗の特性に関する研究」
・2002年3月修了,杉原将和,「教材用模型飛行機の設計法に関する研究」
・学生団体MARC(模型飛行機研究会)の顧問としてMARCのメンバーとともに地域の小・中学校生に模型飛行機を利用したものづくりを体験させる活動を行っている。MARCのメンバーである学生の実践的教育能力の向上が狙いの一つである。
「5」
地域への貢献
1)目的
・21世紀の日本は熾烈な国際競争の中で生き残らなければならない。そのために最も重要な能力は創造力であろう。今のところ,創造力育成のための明確な処方箋はない。しかし,できるだけ早い時期から創造力を発揮させることが創造力育成につながると考えられる。設計を含むものづくりは児童・生徒に創造力を発揮させる有効な方法である。そのような考えの基にこの活動を行っている。
・この活動は,一方で,科学技術に親しませることで児童・生徒の科学技術離れを予防すること,地域と大学の交流を促進すること,指導する学生の実践的教育能力を向上させることも狙っている。
2)現在まで,現状および今後の予定
・学生団体MARC(模型飛行機研究会)と一緒に実践している。
・現在まで:活動を開始した1999年には,この活動のPRも兼ねて,社町内の6小学校全てを訪問する目標を立てて,それを実践した。その後,公民館等から依頼が来るようになり,現在はそれに対応する形で活動を続けている。いずれも,大学公認の活動として実施している。
・今後も,「3」(2)の研究,「4」(3)の教育と連動させて,続ける予定である。
3)過去3年間の実績
NO. |
実施年月日 (活動形態) |
事業名 |
対象者 |
対象機 |
||
|
|
|
児童 (名) |
保護者 (名) |
グライダー |
プロペラ機 |
9 |
H12/4/30 (MARC学外活動) |
姫路YMCAの活動 |
大学生 約40 |
|
○ |
○ |
10 |
H12/5/5 (MARC学外活動) |
夢前町芦田子供会の活動 |
幼児,児童 約30 |
|
○ |
○ |
11 |
H12/7/30 (H12年度大学等地域開放特別事業) |
社中央公民館との共催「空へのチャレンジ」 |
92 |
70 |
○ |
○ |
12 |
H13/1/6(土) (MARC学外活動) |
小野市中央公民館ウインタースクール「空へのチャレンジ」 |
17 |
6 |
○ |
|
13 |
H13/1/20 (MARC学外活動) |
鴨川小学校 |
57(1-6年生) |
|
○ |
|
14 |
H13/2/10(土) (MARC学外活動) |
社中央公民館生涯学習町づくりセミナー「兵庫教育大学を歩いてみよう」 |
|
15 |
○ |
|
15 |
H13/7/29 (H13年度大学等地域開放特別事業) |
社中央公民館との共催「空へのチャレンジpart 2」 |
57 |
20 |
|
○op |
16 |
H13/8/19 (MARC学外活動) |
2001青少年のための科学の祭典ひょうご第7回大会,丹波会場 |
40 |
10 |
|
○op |
17 |
H14/1/5(日) (MARC学外活動) |
小野市中央公民館ウインタースクール「空へのチャレンジ」 |
30 |
10 |
|
○op |
18 |
H14/7/27(土) (H14年度大学等地域開放特別事業) |
社町中央公民館と共催:夏休み小学生チャレンジ教室「空へのチャレンジV」 |
40 |
10 |
|
○op |
19 |
H14/7/19(月) (MARC学外活動) |
小野市コミュセンいちば夏休みサマースクール「空へのチャレンジ」 |
23 |
4 |
|
○op |
20 |
H14/7/27(火) (MARC学外活動) |
小野市コミュセンおおべ夏休みサマースクール「空へのチャレンジ」 |
20 |
2 |
|
○op |
21 |
H15/1/5(日) (MARC学外活動) |
小野市コミュセンいちば冬休みウィンタースクール「空へのチャレンジ」 |
38 |
10 |
|
○op |
22 |
H15/1/25(土) (MARC学外活動) |
滝野町中央公民館「土曜ふれあい塾」 |
50 |
|
|
○op |
Fig.6
H15/1/5の小野市での「空へのチャレンジ」
以上